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キャンペーンだけでラジオは復権するか

2011年11月17日付 中外日報(社説)

昭和20年代後半、全国各地に民間放送ラジオ局が生まれた時、多くの局のニュース原稿は系列新聞社の記者が書いた。民放のラジオ局にはまだ取材体制が整っていなかったからだ。

新聞社に新設されたラジオ報道部では、ベテラン記者がデスクを務めた。デスクは部下にハッパを掛けた。「新聞記事を書く前に、ラジオ用の情報を流せ。火事の現場へ行ったら焼失面積の確認は後回しでよい。今、何町の何丁目が燃えていますという生々しい実態を知らせろ」

大正14年以来の実績を持つNHKラジオに勝とう、を合言葉に、記者たちは新聞用、ラジオ用二通りの取材をした。もちろんNHKも、民放局に後れを取らぬよう、速報体制を強化した。

速報でない解説的ニュースの場合は、耳で聞いて分かる文章表現を工夫した。当時最大の労組組織を、新聞記事では「総評」と書いたが、ラジオ用原稿では「総評・日本労働組合総評議会」とフルネーム併記した。

だがラジオの時代は短かった。数年後にテレビの放送が始まると、ニュースも他番組も、主たる舞台はテレビに移り、ラジオは脇役に退いた。そして今、テレビはあるがラジオはないという家庭が増えた。

先ごろ、東京・渋谷の街頭で「はじめまして、ラジオです」というキャンペーンが行われた。在京のNHKと民放ラジオ局が、ラジオの良さをPRするために共同で催した。人気のパーソナリティーらが顔をそろえ、身近な存在としてのラジオに親しんでほしいと呼び掛けた。ターゲットは、ラジオを聞いたことがない若い世代だった。この催しは、近く大阪でも行われるという。

キャンペーン。良いことだ。東日本大震災などの避難所で、ラジオが有力な情報源になったことも強調したい。だが今のラジオに反省点はないだろうか。

ニュースを早口で読まれると、聞き取りにくい。ゲスト解説者がガラガラ声だと、何を言っているのか分からない。NHKの場合、地元局が「震度1」の地震速報を伝えるために東京発信の番組に割り込むと、その間の東京の情報が聞けずじまいになる。聴く側のニーズを尊重してほしい。

仏教界では、一部の宗派で節談説教の長所が見直されている。信者にとって分かりやすく、興味を持って聴けるという点が再評価されたのであろう。ラジオ復権への見解の一つになりはせぬかと、あえて提唱する。