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不要となる日のため いまボランティアを

2011年10月15日付 中外日報(社説)

「ボランティアが要らなくなる日のために、いまボランティアをしているのだ、という言葉に感銘を受けたことがあります。約25年前に、愛知県豊橋市で開かれた福祉関係研修会の席でした」。京都市の要約筆記サークル「かたつむり」の元会長、西原泰子さんはこう語った。

要約筆記については、本欄で数回にわたり紹介したが、難聴者や中途失聴者で手話を習得していない人のため、講演や会議の内容の要点を同時通訳的に文字で示すボランティア活動で、手書き(ノートテーク)とパソコン印字の2方式がある。

1981(昭和56)年の国際障害者年の前後から、全国に広まった。今ではイベント等の舞台には大きなスクリーンに要約筆記された文字が投影され、手話通訳者ともども、耳の不自由な人々の助けとなっている。

「かたつむり」の主要メンバーとして活動してきた西原さんは、難聴の人々と共に努力を重ねた約30年間の体験を、このほど京都府宇治市で開かれた全国要約筆記問題研究会(全要研)京都支部研修会で、ボランティアの仲間たちに報告した。 

「ボランティアが要らなくなる日」とは、ボランティアがことさらに活動しなくても、誰もがごく自然に障害者を支えてゆくような社会を実現することを意味している。

かつて、京都のある大学に入学した難聴の女子学生が、教室でサポートしてくれる人を求めるビラを配ったことがある。「かたつむり」のメンバーが授業に付き添って、講義の要点を書き記した。その一方で、健聴の学生を対象に、要約筆記の要領を伝える講習会を開いた。やがてその大学はもとより、他の大学でも、難聴の学友を支える機運が盛り上がって「かたつむり」の支援は不要になった。「外部ボランティアの要らない」学園が実現したのである。

難聴者の悩みの一つは、バスに乗った時に次の停留所がどこかが分からないことだった。西原さんたちの働き掛けで、まず京都市バスの車内に、次の停留所名を電光表示する装置が取り付けられた。他のバスや電車にも次々に同じ表示装置が備えられた。

また難聴を表す「耳」マークを示すことで、郵便局や銀行、病院などの窓口が筆談で対応する態勢が整えられつつある。「ボランティアが要らなくなる日」のため、難聴問題以外の場でも、障害者をサポートする菩薩行がさらに広がることを期待したい。