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理科教育の時間が削られた揚げ句に

2011年10月4日付 中外日報(社説)

作家の林真理子さんが聞き役の『週刊朝日』対談ページで、ゲストのサイエンスライター・米村でんじろうさんがユニークな答えをしていた。米村さんは子どもたちに理科の実験を披露する「サイエンスショー」で有名である。

米村さんによると、昭和50年代以後、学校教育での理科の時間数がどんどん削られているそうだ。国際化や男女平等を重視して、英語や家庭科の時間が増える一方、理科の時間が減らされる。さらに高校は選択制だから、点数を取りにくい物理は敬遠される。一部の高校では物理の先生に、他の教科を担当させている。

平成18年10月31日の本欄では、かつての高校で地学(天文学や地質学)を選択する生徒が少ないため、地学の授業は非常勤講師任せにしている例を紹介した。今回の『週刊朝日』対談で米村さんと林さんは、近年の私立大学文科系の入試では化学や生物を出題されることがないから、理科離れ、科学離れがさらに加速する傾向にあると話し合っている。

この対談から連想されるのが、東日本大震災以後に広まった"放射能パニック"のことだ。対談では直接触れてはいないが、社会の一部では放射能と聞いただけで震え上がる人もいる。

先の京都の五山送り火。最近の愛知県日進市の花火大会。いずれも東北の松材や花火の玉を使うと決まると「放射能が広がる」と抗議メール等が届く。主催者が中止すると「なぜやめた」と、数倍の非難メールや電話。主催者はたまったものではない。

イベントの実行によって、放射能がどう増えるのか、通常の状態で存在する放射能とどの程度の差があるのか。国民の大多数が高校教育を受けていながら、それを判断する知識がない。その原因の一つが、学校教育での理科離れにありはしないか。

放射能に直接関係はないが、震災復興問題で提言を重ねているある評論家が、総合雑誌のエッセーで「東北6県の地図が正しく書けない評論家もいる」と告白していた。高校教育で、理科に次いで敬遠されているのが地理だといい、その評論家自身も日本の47都道府県の位置関係を完全に理解していないという。それで、政治や経済の諸問題が論じられているとは驚きだ。

旧制の中学校、女学校では、理科も地理・歴史も国語の文法も、一通りのことは教えていた。戦後の学制改革で、教育は果たして良くなったといえるだろうか。正見を授ける教育を願いたい。