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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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震災を通して見えた異文化とのかかわり

2011年7月23日付 中外日報(社説)

震災をめぐる国際的連帯について前に書いたが、長期化する災厄の中で、普段は見えにくい「異文化」との触れ合いが見えてきた。

各国の多くの在日ムスリムたちが連日、被災地での炊き出しや物資輸送などに活躍している。各地のマスジド(モスク)を拠点に、なんと日本人の舌に合わせて焼きそばなども調理する。宮城県内のボランティア拠点では、パキスタン男性らが特製のカレーを振る舞ってくれた。

だがその傍らには、「アッラーのほかに神はなし。ムハンマドはアッラーの使徒なり」とのイスラームの教えを日本語とアラビア語で書いた幕が掲げられており、好奇の目で見る人もいた。避難所などで「宗教お断り」が仏教僧たちの支援活動に影を落としているだけに、批判もあるだろう。

しかし、大方のムスリムは自己の信仰を決して隠すことはない、と同時に他人に押し付けることもない。彼らにとってイスラームは「生き方」そのものであり、このようなザカート(喜捨)は当然の行いであって、もはや「ボランティア活動」でさえない。

あるグループは、支援活動を「ジハード」だと堂々と話すが、この語の通常使われる意味は「困難に立ち向かう努力」だ。それを「聖戦」という極限の意味だけにゆがめ、ごく一部だけを捉えて、抑圧や侵略といった背景抜きに「テロ」と短絡させるのは、欧米の価値観に偏った誤った見方であることを再認識させられる。

オマーンの企業が、原発事故で操業停止に追い込まれた福島の町工場に、26億円分の浄水器製造を発注して支援。インドネシアではイスラーム指導者の発議で「原発はハラム(教義上の禁止行為)」との裁定が出、建設計画反対運動の指針となっている、とのニュースもあった。

一方、報道では、わが国の捕鯨活動に暴力的妨害活動を繰り広げる米国の団体「シー・シェパード」が、「われわれの行動が被災者への支援を生み出した」との声明を出した。妨害によって調査捕鯨を断念した船が被災地への物資輸送に回ったからという理屈だが、代表者は震災と津波について「海の神が怒った」との趣旨の詩を発表し物議を醸している。

鯨捕獲の報いだと言いたいのかもしれないが、「天罰」発言のどこかの首長にも似ている。このように「神」を持ち出す牽強付会ぶりは理解に苦しむが、ある種の「信仰」がかかる的外れや偏狭さを生み出すということも、知っておく必要があるだろう。