ニュース画像
「誠」の隊旗を掲げた五重塔院で営まれた法要
主な連載 過去の連載 エンディングへの備え
苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版

画一的な復興対策 矛盾は弱者に集中

2011年7月9日付 中外日報(社説)

物事を根底から問い直すということと、細部を顧みず一律に対処することは全く別だ。

東日本大震災で私たちの生き方、社会のさまざまな仕組みが問い直されているのは自明のことだが、それが個別のさまざまな事情に目を向けず、十把ひとからげに強引に進められるとしたら、相変わらず弱者に矛盾が集中する結果を生むだろう。

夏の電力需要ピークを前にした「節電」の大合唱。安全軽視で大事故を起こした電力会社に言われたくはないが、画一的実施で例えば体の不自由な人たちに必需の公共施設のエスカレーターや誘導灯まで止めるのはどうか。

エアコンの使用抑制でも、昨夏の猛暑で冷房をつけることのできない多くの生活困窮者や高齢者が熱中症死したことを考えれば、きめ細かい対応が望まれる。

避難してきた被災者が「東北に比べて別世界」と複雑な思いを吐露した大都会の過剰な電飾、「政争のための政争」に明け暮れる政治家たちの方が、電力エネルギーを浪費しているのではないか。

被災者支援策では、遅ればせながらようやく配布が始まった義援金を受けた人たちが、しゃくし定規な役所の対応で生活保護を打ち切られるという事態が起きた。

被災地の復興や生活再建でも、「高台に未来都市を」といった「都会の論理」が、「地域ごとに異なる実態を無視した空論」と反発を呼ぶ。現に、高齢者の多い岩手県釜石市や福島県相馬市では、各戸をデッキで結んだ「コミュニティケア型仮設住宅」や「長屋風共同住宅」といった地元の自前のアイデアが次々と出されている。

農水産業について、「非効率な従来の経営形態を見直し資本の積極参入を」と経済特区を導入するのも綿密さが肝要だ。

収益優先で、もうからなければ撤退するような企業によって海や耕地が「工場化」されることで、長年にわたって築き上げられた地域コミュニティーや、あれほどの災難に遭いながらもなお「海はいのちの源です」という漁民たちの「生活文化」が破壊されれば、元も子もないだろう。

結局、市井の人々の暮らしの場を無視するなら、何事も心の入らない「イベント」になり、根本的に社会矛盾は何も変わらない。

「神は細部に宿る」とは芸術家の言葉だが、社会的に弱い立場の人たちである「小さくされた者たち」の側に立つはずの宗教者は、よもや根本的な問題に目を向けることなくして「少欲」だけを説くようなことはないだろう。