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"菅おろし"報道で被災者は置き去り

2011年6月28日付 中外日報(社説)

昭和24年の秋だった。被爆の跡が生々しい広島市内の小さなビルの会議室で、日本社会党(当時)の講演会が開かれた。近畿地方選出の女性代議士、Aさんが登壇、原子力の平和利用の重要性を訴えた。「原子力で発電すると、安いコストで豊富な電力が使えるようになります。広島の皆さんにこそ真っ先にご理解頂きたい」

質問が出た。「原子力は新しいエネルギー源だが、発電のコストは安くならないのではありませんか」。するとAさんの口調は急に歯切れが悪くなり、他の話題にそらせて講演を終えた。そこまで調べていなかったらしい。後に初代広島大学長となる森戸辰男氏も地元選出代議士として同席していたが、答えに窮したAさんを見て渋い表情だった。

日本の原子力発電は昭和30年代以後、自民党を中心とする保守系政治家によって推進されたが、社会党にもAさんのような原発推進派がいたことになる。

東日本大震災以後の政界では、東電福島第1原発の放射能漏れ対策を中心に、菅直人首相率いる民主党内閣の対応が手ぬるいとの批判が活発だ。自民党など野党はもとより、民主党の一部までもが、菅首相の退陣時期を国会論議の焦点としている。何かチグハグだ。各紙の川柳欄には、自民党は原発を造った責任を頬かむりしていると風刺した作品が見える。

一般国民は、このような時にこそ全政治家が党利党略の争いを捨て、被災者救援対策に力を合わせてほしいと願っている。端的な表れが各紙の読者投稿欄だ。社会人はもとより小・中学生からも「政争はタナ上げして協力体制を」との訴えが目立つ。

では菅内閣はベストを尽くしたのだろうか。ある新聞がこの100日余、現地で苦労した人の声を聞く座談会を開いた。次のような問題点が指摘された。

暖房用の燃料不足を訴えたら、大臣はすぐ送ると答えた。実際に届いたのは1週間後だった▽病院が緊急治療のため例外的処置を取ると電話連絡したら、本省は「書類にして申請せよ」と言った▽避難所に手すりがないため、お年寄りは行動ができず"寝たきり"になってしまう。

なるほど、政治、行政上の問題点は少なくないようだ。だがマスコミは、座談会を開くより前の段階で、こうした事実を十分に報道しただろうか。"菅おろし"の経過とシーベルト数値の報道に終始していなかったか。宗教者やボランティアの体験に基づく報道に、もっと努力してほしかった。