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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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発電用風車の下に広がっていた草原

2011年6月14日付 中外日報(社説)

ある都市で、ビルの新築や改築の工事が始まると、地元電力会社の社員が駆け付け、オール電化を勧めた。ガスを併用すると、ガス漏れ事故が起こるかもしれないが、電気だとその心配がないと力説したそうだ。

A市の9階建てBビルはその勧告を入れ、全面改装を機にガス配管を撤去した。困ったのはテナントのC歯科医だ。部分入れ歯の金具を加熱して微調整する時、ガスバーナーを使っていた。電熱器では細かな加熱ができない。やむなく義歯を自宅に持ち帰り、加工することにした。

とはいえ電力会社は、このような企業努力を積み重ねて着々と売り上げを伸ばしてきた。背後に、原発による豊かな電力供給量の支えがあったからだ。

だが東日本大震災を機に、原発万能史観が大きく変わった。東電福島第1原発の放射能漏れ事故の影響で、原発は極力抑制し、自然エネルギー発電に切り替えようとの世論が高まった。

ところで電力業界は原則的に、発電した瞬間にそのエネルギーを消費しなければならない。特殊な業態である。今この地域の電力需要が何万キロワットであるかを見て、それに見合う発電機を回す「まず消費量ありき」産業なのだ。

だが自然エネルギーは風任せ、太陽任せ発電である。送電量を増やすため風車により早く回ってもらうわけにはいかない。その不足分をカバーするには、原発がだめなら火力発電にバックアップしてもらうしかない。いきおいCO2の排出量が増える。

先日、九州へ旅行した。熊本空港に降り立ち、阿蘇へ向かった。外輪山の稜線に、銀色のスマートな風車が7基、回っている。隣の稜線には3基。車を止めて風車の下に立つと、 意外に強い風が吹き付けている。

案内の人が言った。「熊本県は阿蘇地方を中心に、全国有数の草原地帯が広がっている。風も吹くから、風力発電の適地です。草原は牛や馬の放牧に利用されています」。筆者は数年前に訪れたニュージーランドでの、羊の放牧風景を思い出した。

だが、日本は毎年の降雨量が多い。風車を建設するため、全国各地の森林を草原化すると、山々の保水力が低下する恐れはないだろうか。太陽光発電を含め、自然エネルギーの活用には、長所と共に短所も伝えられている。コストの問題もある。

京都・龍安寺の蹲踞の「吾唯足知」の四字に学び、節電を起点に議論を尽くすべきであろう。