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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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激変する現代の社会 細部の目配りも重要

2011年6月9日付 中外日報(社説)

21世紀になってから、現代世界で起きている出来事への広い目配りを続けている本として、『宗教と現代がわかる本』(平凡社)と『現代宗教』(秋山書店)が挙げられるだろう。いずれも年に1回刊行されている。

前者は平成19年から刊行され今年で5冊目となる。後者はそれより早く13年からで、今年で初刊から丸10年となる。それぞれ特集記事と共に、1年ほどの間に起こった宗教関連の出来事を紹介し、現代において正面から取り組むべき問題についての、小論やリポートの類を数多く掲載している。

東日本大震災や原発事故のように、未曽有ともいうべき事態に遭遇すると、あまりの悲惨さに多くの人が心を痛めることになるが、同時にそれに構わず進行している他の重要な課題からも目をそらすわけにもいかない。

世界は激変しているし、日本社会も多くの困難の中で、手探りを続けている。宗教者や宗教研究者が取り組むべき事柄は、山積状態と言っていい。

くしくも3月11日が刊行日とされていた『宗教と現代がわかる本2011』は、「信仰と人間の生き方」が特集のテーマとなっている。苦難のときに、信仰がどのような支えになったのか。震災前のインタビューなどが、それ故に重さを増している。

また『現代宗教2011』の方は、現代文化の中の宗教伝統を特集している。揺れ動く伝統的宗教文化の現状と、それに対する提言もなされている。

世界も日本も社会の変化が激しければ、当然のことながら、価値観の再考が突き付けられる。何らかの価値観なくしては、人間は生きられない。しかし、従来の価値観では対処できない側面が多々生じている。それは世界全体が直面している課題であるから、一朝一夕に答えが得られるものではない。

緊急に対応しなければならない非常事態と、恒常的に迫っている問題と、双方に目を配りながら、明日への展望について考え、実践していかなければならない。

心裂かれるようなつらい場面にも向かい合わなくてはいけないし、それほど激しく表面化していなくても、確実に社会に変化を及ぼしている現象のことを忘れるわけにもいかない。

2冊の本は同時代的現象について数多く紹介しているが、そのどれかが近い将来に日本社会に大きな影を落とすやもしれない。複雑な時代ではあるが、細部から目をそらすわけにはゆかない。