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放射能漏れ騒ぎでヒロシマ学習中断

2011年6月2日付 中外日報(社説)

東京電力福島第1原子力発電所の放射能漏れで、多くの留学生が日本から本国へ避難したと聞いたが、まさか次に記すような事態になっているとは知らなかった。

AFSという国際的な組織がある。フルネームは「アメリカン・フィールド・サービス」。第1次大戦の時、傷病兵を支援するために生まれたが、第2次大戦以後は「戦争を起こさないために」と、高校生の交換留学で相互理解を深める活動が中心となった。日本のAFS日本協会をはじめ、組織網は約70カ国に広がっている。

日本協会は最近では、毎年300人前後の留学生を送り出し、ほぼ同数の外国人留学生を迎えている。細かな世話は、全国71カ所の支部が担当する。

関西の中心は、何といっても京都と大阪だ。留学生はホストファミリーと呼ばれる家庭で1年間生活し、受け入れ校のホストスクールへ通学する。年齢的に差の少ない日本側大学生が、ボランティアで相談役を務める。

2003年、関西地区の学生たちが提案した。「せっかく日本へ留学したのだから、広島で平和学習をしたらどうか。広島の市民たちが、世界平和のため、核廃絶のためにどんな意識を持っているかを学び、それを故国に持ち帰ってほしい」と。留学生はもちろん大賛成だ。約20人が毎年6月に広島を訪問する慣習が定着した。

ボランティア学生を案内役に、原爆ドームや平和記念資料館を見学し、被爆者の体験談を聞く。7月に報告会を開いて、広島で何を学んだかを発表する。旅行の費用は日本協会からの補助金と、有志市民のカンパで賄う。

ある年、やむを得ない事情で広島旅行に参加できなかった留学生がいた。その生徒は後日、一人で広島入りし、仲間が見学した場所を回って、広島市民の心情を胸に刻み込んだ。

その平和学習が9年目の今年、中断することになった。例年なら3月下旬に勢ぞろいする留学生が、放射能が怖いと言って、来日しないのだ。鹿児島県にスイスからの1人が残るだけ。「8月来日に延期します」というが、果たして何人来るだろうか。今年も広島の案内役に、と張り切っていたボランティア学生は肩透かし。

核廃絶のこころを学ぶ慣習が、放射能漏れ騒ぎで中断されるとは皮肉な現象だ。学生たちは入れ替わりが急だから、1回でも休むと、広島旅行のノウハウを伝えるのが大変である。平和学習の旅が、来年は復活することを望まずにはいられない。