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テロの挑発と報復憎悪の連鎖脱却を

2011年5月12日付 中外日報(社説)

アメリカ軍特殊部隊の攻撃により、今月2日、パキスタン国内でビン・ラディン容疑者が殺害された。オバマ米大統領は「正義は遂行された」と高らかに宣言し、米国民は喜びに沸いている。

米国民の反応は理解できるが、米軍がパキスタン政府に対する通告なしに作戦を遂行したことはやはり問題である。実際、国連のパン・ギムン事務総長と中国政府はこの作戦によるパキスタンの主権侵害への疑念を表明した。

アルカイダが2001年9月11日の大規模テロを行った意図に関してはさまざまな見解が出されたが、その中には、アルカイダはテロによってアメリカの過剰反応を誘発し、もって世界の反米感情を煽るという見方もあった。もしこの見解が正しければ、アメリカはまんまと挑発に乗ってしまったのではないか。

テロ事件後、ブッシュ前米大統領はビン・ラディン容疑者の引き渡しを拒んだという理由で、十分な武力も持たないアフガニスタンに侵攻し、タリバンの支配を覆して親米政権を樹立した。さらに、イラクが大量破壊兵器を保有し、アルカイダと結んでいるとしてイラクを攻撃し、サダム・フセインを逮捕、処刑した。

しかし後になってイラクに大量破壊兵器はなかったし、フセイン政権がアルカイダを援助していた証拠も存在しないことが判明した。

常識的にはアメリカはイラクに謝罪し賠償を果たすべきところだが、その様子は一切なく、アメリカは、戦争はイラク民主化のためだったと説明している。

9・11から10年、アメリカの執念と努力は凄まじいものだった。ビン・ラディン殺害はアメリカにとっては成功物語として後世に伝えられるものだろう。だが、イスラム世界との関係からすれば穏当ではない。パキスタンは軍事的中心地への他国軍の国内侵入を知らされもせず、察知もできず、まして阻止もできなかったという無力さを示して主権国家としての体面を失った。

一方、アメリカは、国益のためならば国際法をも無視するという暴力性を世界に露呈したと言わざるを得まい。

中近東はイスラエルとアラブの相克、石油利権、独裁的政府と民主化運動の対立に揺れる不安定な地域である。それにイスラム教徒とキリスト教徒の宗教的対立感情が絡む。そういう状況での今回の作戦は中東での反米感情の一層の増大を招くのではないかと強く恐れるのである。