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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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ボランティアへの行政の対応に疑問

2011年4月12日付 中外日報(社説)

東日本大震災の現場に駆け付けた「被災地NGO恊働センター」(神戸市)代表の村井雅清さんが戸惑ったのは「仕組み」を求める行政のかたくなな対応だった。

「大勢のボランティアが来ると混乱するという誤った固定観念があり、コントロールが必要というのが"仕組み"の意味。だが、それがボランティアの愛他精神を阻害する。阪神・淡路大震災との大きな違いです」。村井さんは、その認識の落差が被災者支援に響くことを強く懸念している。

阪神・淡路では百数十万人ものボランティアが結集し、活動調整のため神戸にNGO救援連絡会議が設立された。調整と言っても、活動は個々のボランティアの自由意思に任せ、2週間に1度くらい集まって理念と役割分担を確認する程度だった。それでもボランティアたちは、それぞれに自分の活動の場を見つけ被災者に寄り添って失意を癒やし、自立への手助けをした。筆者は連絡会議に関わったが、混乱があったという話は耳にしなかった。混乱したのは、むしろ行政当局の側だった。

同センターは連絡会議の成果と教訓を受け継ぎ、国の内外で大災害が発生するたびに救援スタッフを派遣してきた。東日本大震災では岩手県遠野市など2カ所に拠点を置き避難所の被災者手作りの象のぬいぐるみを「まけないぞう」と名付け300~700円で全国に販売して家計の手助けをし、新燃岳の噴火で被害を受けた宮崎県産の野菜を届け、足湯サービスをするなど多彩な活動をしている。長期支援の態勢も固めている。

ボランティアは心と心の触れ合いを欠かせない。人は十人十色だが、個々に差異はあっても互いに関わって生きていることを確かめ合い、共通の問題を解決する。被災者もボランティアもない。それが同センターのモットーだ。村井さんは「仏教には素人で少し乱暴なようですが、ボランティアは群れずに個の解放を目指すという意味で親鸞の生き方と重なるように思います」と言う。「仕組み」には本来なじまないのである。

村井さんは当初岩手県に入った際「車、人、ガソリンはある」と伝えたが「仕組みがない」と2、3日足止めされたそうだ。ボランティアへの偏見は被災地全体で独り歩きしているようだという。

今回の大震災では被災者一人一人に寄り添う心の支えが求められている。ボランティア受け入れの「仕組み」づくりにこだわり、救える被災者も救えないのでは本末転倒も甚だしい。諸事情もあろうが、あえて一石を投じたい。