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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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何よりの情報源は新聞だった被災地

2011年4月7日付 中外日報(社説)

第30回土門拳賞を受賞した写真家の石川直樹氏は、東日本大震災が発生すると、直ちに青森県経由で岩手県に入り、救援物資の輸送に協力したそうだ。日本経済新聞に寄せた手記によると、インターネットが使えず、携帯電話も通じない中で、新聞が最高の情報源になった。どの道が通れるか、どの地区が停電しているか、どこの公衆電話が使えるか、などの事情がよく分かった。吹雪の中、泥まみれの長靴を履き、社の腕章を着けて歩く記者の姿も見た。

「避難所の目にとまりやすい場所に、まわし読みされてぼろぼろになった新聞が置かれている」のを見て、緊急時の新聞の働きを再認識したと記している。

一方、大阪ガス相談役の野村明雄氏は「新聞は速報性よりも分析と検証で勝負してほしい=要旨」と提言する。現地の防災体制、都心の帰宅難民問題を論じるなど、新聞の任務はこうした点にある、と毎日新聞に寄稿していた。

両氏の論旨に共通するのは、災害の現場でのこまめな取材力と、必要な情報を選り分け目利きして紙面化する編集力への期待の大きさだ。これこそジャーナリズムの力というものであろう。

かつて、一部の青年実業家が、インターネットさえあれば、ジャーナリズムは不要だと言い切ったことがある。しかし今回の大震災では、ネット情報の多くはメディアの情報をなぞっているだけだということが分かる。

残念だったのは、ある新聞の読者投稿欄に「被災者救援活動に宗教者がほとんど参加していない」という趣旨の意見が採用されていたことだ。仏教界だけを見ても、教団として、あるいは個々の寺院として、従来以上に活発な菩薩行が展開されている。ある寺院が本堂を避難所として開放しているのを大見出しで伝えたのは、その投稿を掲載した新聞だった。内部連絡が不十分だったのか。

前記の石川氏は、新聞に掲載された避難者の名簿を、瞬きもせず見詰めている姿に感動したという。また野村氏は、テレビに辟へき易えきし、ネットに飽き足らない人にとって、信頼できるメディアは新聞しかないと感じた、と記している。活字によるメディアに携わる者には、何よりも力強い励ましである。

中外日報としても、被災地での宗教者の働きを、さらに詳しく伝えていきたい。その決意を込めつつ、紙面改革を行い、本欄もこのように模様替えした。読者各位が微意を酌み、さらなる支持と理解を賜ることをお願いしたい。