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教団附置研究所 期待される役割

2011年2月19日付 中外日報(社説)

教団の中には附置研究所を持つ所がある。比較的組織が大きくなると、教学研究や後継者の育成といった教団が持つ課題に対応する部署が求められるようになる。研究所組織は、そうした目的には最も適しているといえる。

附置研究所同士の連絡も試みられている。平成十四年には教団付置研究所懇話会が発足している。現在二十六の研究所が加わっている。毎年懇話会を開催し、メンバー同士のコミュニケーションは、一定程度なされているようである。生命倫理研究部会、宗教間対話研究部会、自死問題研究部会という三つの研究部会がある。社会的な問題に宗教も積極的に取り組もうとする姿勢が示されている。

宗教教団が社会に発信していく手段はあまたある。ネット時代には新しい手段も登場した。そうした新しい手段の利用と共に、このような地道な機関の活用もまた、格別の重さを持っている。

そもそも宗教組織に付設された学びの機関は、歴史的には非常に重要な位置を占めていた。中世ヨーロッパにおいて、キリスト教の修道院が大学のインフラとなったことはよく知られている。仏教のサンガも、最高の教育機関の機能を有した例がある。宗教の付属施設が教育や文化に大きな貢献をした時代があったのである。しかし、近代化の過程で世俗の教育機関が充実してくると、宗教施設が持っていた教育・研究の機能は相対的に減少した。

情報時代になると、すさまじく変わる社会情勢に迅速に対応する必要性も増える。じっくりとした研究に取り組む研究所は、時代に取り残されがちな印象がないでもない。しかし、慌ただしい世の中であればこそ、いっそう重厚な社会への情報発信も大きな意味を持つのである。そして何よりも人材を育成する上で、掛け替えのない機能を持っている。

大学においても、学部教育はともすれば短期的な視野になりがちである。毎年の受験生の確保や、一年ごとに変わっていくかに見える学生の意識の対応に気を使わざるを得ない。就職のことも考えてやらなくてはいけない。同世代の半数以上が大学に進学するとなると、高等教育というより、中等教育というのがふさわしい例が増えている。

そこで長期的視野を持った研究を進め、教育制度のビジョンをじっくり構築するときには、研究所の役割ががぜんクローズアップされることになる。実際、人文系の大学でも、しっかりした研究所を持っている所は、しばしば社会的影響力の大きい成果を生み出している。

同じようなことは、教団附置の研究所にも、ある程度当てはまる。信者の教化、布教、あるいは日々の社会的要請への対応といった差し迫った課題とは別に、五年、十年、さらには二十年といったようなタイムスパンで考えるべきことがある。次の世代の信者を育てるために必要なことは何かとか、これから先に社会で大きな問題となることは何であろうかを予測し、それに対応するための基礎的な研究をするといったことは、研究所が最もやりやすい事柄であるはずだ。

そのためには、附置教団相互の情報交換だけでなく、社会全体との情報交換や意見交換を、さらに深めていくための仕組みも必要となろう。各教団が研究所の意義をしっかりと認識していることは、言うまでもなく大前提である。