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未来の扉閉ざす女性の能力軽視

2010年11月11日付 中外日報(社説)

郵便不正で大阪地検特捜部の証拠改ざん事件は当時の特捜部長らも訴追され組織ぐるみの様相だが、事件発覚の端緒は女性検事の勇気ある行動だった。一方、同僚の男性検事は改ざんを知りながら沈黙を続けたという。正義を追求するはずの司法の現場であらわになった、男女検事の行動の落差。近年、日本の活力低下は後述するように女性の社会進出の遅れが一因という主張を聞く。それとどこかでつながるように思う。

「女性検事が騒いでいますが根拠のない話です」。報道によると特捜部長は、地検トップの検事正にそう報告したとされる。少し整理すると、特捜主任検事が元厚労省局長を逮捕・起訴後の昨年七月、裏付けとした局長の元部下作成の証拠を改ざん。元部下を取り調べた男性検事にはそれを伝えた。今年一月の元局長の初公判の後、女性検事はその男性検事から初めて改ざんを知らされて驚き、組織内で"告発"の動きに出た。前記の特捜部長の報告はその数日後のことだ。

結果的に事件発覚は九月の元局長無罪判決後、A紙のスクープによるが、女性検事の行動がなければ、闇に葬られていた可能性が高い。沈黙を続けた男性検事は主任検事への遠慮とされる。検察庁には「検察官一体の原則」があるが、外部に閉ざされた集団はよほど自律機能が働かないと組織の独善と退廃を招く。検察の体質改善の必要性を見せつけた点でも女性検事の勇気は重要な意味を持つ。

この事例を女性の社会進出に結び付けるのは幾つかの理由からだ。

バブル崩壊後の経済低迷期に、日本は「男尊女卑」「官尊民卑」「中(央)尊地(方)卑」の克服が急務という言説をよく聞いた。いずれも根強く残る旧弊で、改善しないと国民の潜在能力が十全に発揮できないという趣旨だ。

女性問題では昭和六十年に「男女雇用機会均等法」、平成十一年には「男女共同参画社会基本法」が制定され、制度上、男女平等は進んでいる。ところが国際指標はまったく逆だ。例えば国連開発計画が「ジェンダー・エンパワーメント指数(GEM)」という各国の女性の活躍度指数を毎年公表しているが、昨年日本は百九ヵ国中五十七位でロシアなどと同水準だった。さらに憂うつなのは、GEMの公表は平成七年から始まったが、日本はその年二十七位で以後毎年のようにランクを下げている。つまり各国の女性進出の速度が速く、日本は取り残されている。先日、報道された世界経済フォーラム(ダボス会議)発表の同様の指数でも日本は百三十四ヵ国中九十四位でイスラム圏並み。中国は六十一位だった。

二つの指数に共通するのは国会議員や企業の役員に占める女性比率の重視。政策決定や経営にかかわる女性が少ないと、人口の半分の意見が社会に反映され難い。日本の女性衆院議員の比率は一割強でほぼ指数のランクに対応する。少子高齢社会を迎え女性の能力がもっと活用される条件整備を急がないと、日本の地盤沈下は加速する。

男性中心の社会がさまざまな問題を起こしがちなのは不祥事続きの相撲界を見ても明らかだが、実は新聞業界も男社会で、日本新聞協会加盟社の全記者に占める女性記者の比率は一五%余。国会と大差がない。筆者はかつて某紙で紙面改革会議に度々出席したが、合言葉を「生活者視点の紙面づくり」としながら、会議メンバーに肝心の女性は珍しかった。読者の新聞離れの一因をつくっていたかもしれない。ちなみに女性検事はテレビドラマの影響もあってか近年急速に比率を上げ、一昨年は二割弱。裁判官、弁護士を上回っている。前段で紹介したことと無関係ではなかろう。

さて仏教界はどうか。伝統各教派の教線が広がらない。その理由をジェンダーの視点で考えてみるのも無駄ではないと思うのだが。