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外来の宗教に対するダブルスタンダード

2010年10月30日付 中外日報(社説)

東京・国学院大学の学術メディアセンターで二、三の両日、日本社会とイスラームのかかわりをめぐる公開講演と国際研究フォーラムがあった。講演は京都大学大学院教授の小杉泰氏による「現代イスラームと日本社会」で、国際研究フォーラムのテーマは「イスラームと向かい合う日本社会」であった。

現在日本におけるムスリム人口は、外国人も含めて十万人程度ではないかと推測されている。人口の0.1%に満たない割合であるので、イスラームが近くなったと感じている人はまだ少数派かもしれない。とはいえモスクの数は全国で六十ほどになっている。今後も増えていくと予想される。

ヨーロッパではムスリムが人口の数%に達する国もあり、大きな社会問題となっているが、日本はそうした事態には至っていない。しかし、ムスリムが少しずつでも増えていけば、ムスリムが大事にしているものとか、彼らが守っている戒律などへの理解を深める必要性も増える。あるいは日本で亡くなるムスリムの墓地の問題という切実な問題も、すでに一部では起こってきている。

小杉氏はエジプトでの滞在体験を踏まえながら、イスラームの戒律、特にラマダンについて多くの日本人が持っているイメージを覆すような説明を行なった。一ヵ月間の断食は厳しい面があるには違いないが、それは一種お祭りの雰囲気を持っているということが紹介された。

こうしたムスリムの立場からのイスラームについての語りが増えてくることは、日本社会のイスラーム理解にとって好ましいことである。

フォーラムは日本人が二人、外国人が三人発題した。日本人二人の発表は、それぞれ大阪のモスクの現状紹介と、政治経済にわたるイスラーム諸国と日本とのつながりに関するマクロな紹介であった。外国の事例はエジプト、オーストラリア、ドイツが紹介された。コメントはエジプト人の父と日本人の母を持つ師岡カリーマ氏が行なった。顔ぶれからしても議論は多岐にわたることが予想されたが、実際多くの興味深い議論が提起された。

その中でも、日本人のイスラーム理解を考える上で重要なポイントが少なくとも二つあった。一つは日本社会がイスラームについてヨーロッパのような反応を示さないのは、日本人がイスラームに無知だからというのではなく、いまだ遠い宗教だからではないか、という指摘である。

もう一つは、もっと興味深い指摘で、外国人ムスリムには、比較的寛容であるが、日本人ムスリムに対しては、そうでもないのではないかということである。この点については師岡氏が、実例を挙げて紹介した。外国人ムスリムがヒジャーブをかぶっていても、そのことに対し特に警戒や批判的な態度は見られないのに、日本人がヒジャーブをかぶっていると、日本人なのに、なぜそのような格好をするのかという視線を受けるといったことである。

後者は一種のダブルスタンダードであるが、このような態度はしかし、イスラームに限らずキリスト教に対してもそうである可能性がある。日本に住む欧米の人がキリスト教会に行き、聖書やキリスト教の神を信じることに対しては、批判的な目はあまりない。むしろ憧憬の情さえ伴うことがある。しかし、日本人がキリスト教会に通い、唯一の神を信じるとなると、態度は異なるのではあるまいか。

日本においてイスラームが論じられる時は、ともすれば戒律が厳しい宗教であるとか、一部にテロを辞さない人がいるというような部分ばかりが強調されがちである。しかし、日本人が外来の宗教のどの部分を受け入れ、その部分を拒否したかという古くからの問題に重ねてみるのもまた大事である。イスラームとのかかわりが現実にどのように展開しているのかを知る機会を持つことは、宗教文化の相互理解のために欠かせないだろう。