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宗教協力の歴史と国際社会での課題

2010年10月21日付 中外日報(社説)

国際社会における日本の位置取りの特徴は、非西洋諸国の中で早期に近代化を進めてきたことに由来するところが大きい。多くの非西洋諸国が急速に近代化を進め、困難に直面している現在、日本が経てきた近代化の経験を発展途上の諸国・諸地域と分かち合い、よき発展に貢献することはできないものだろうか。とりわけアジアの諸国・諸地域との交流においてそのような姿勢で臨み、信頼を得ていくことが望ましい。

宗教交流においてもそうである。国際交流が容易になり、諸国・諸地域との距離が近くなってきた。そうなれば宗教集団間の交流も確実に深まっていく。同じ仏教同士でも、スリランカやタイやチベット、あるいは中国・韓国の仏教徒の交流が頻繁になるにつれ、相互の異質性から生じる困難に直面せざるを得なくなる。神道と道教とヒンドゥー教、あるいはアジア各地のアニミズム的な宗教性には多くの共通点があるが、似ていることが分かるにつれて、乗り越え難い差があることにも気付かざるを得ない。これが現状だ。

こうした時節に当たり、国際的な宗教集団間の交流に日本のこれまでの宗教集団間の交流の経験が参考になるかもしれない。日本では近代になって宗教集団間の交流が盛んに行なわれた。その経験から得た智慧を、今後ますます活発になるであろう国際的な宗教集団間の交流に生かしていけるのではないだろうか。

現在、日本の宗教界は宗教間協力や宗教間対話に大変積極的にかかわっている。例えば、一九七〇年にその基礎が築かれた世界宗教者平和会議(WCRP、組織の設立は七二年)は、世界の数十ヵ国の宗教集団が関与し、現在の世界で最も有力な宗教協力組織の一つといってよいが、その発展は日本の宗教団体が協力して盛り立ててきたことに負うところが大きい。また、この組織と連携しながら、七六年に設立されたアジア宗教者平和会議(ACRP)も活発な活動を続けてきている。神道、仏教、キリスト教、新宗教など、日本国内の多くの宗教集団が積極的に関与してきたことによって可能になったことだ。

このように日本が宗教間の国際交流に大きな貢献をすることができたのは、一つには、国家も宗教も早い時期に近代化に取り組んできたことによる。もう一つには、その過程で国内での宗教間協力の経験をある程度積んできたということもある。

例えば、世界宗教者平和会議の設立・発展に日本が大きな役割を果たしたのは、国内の諸宗教団体が宗教協力による平和運動に取り組んできたという背景がある。すでに、大正十三年(一九二四)には日本宗教懇話会が開かれアメリカの排日運動に対処しようとしたが、その話し合いがもとになって昭和三年には日本宗教大会が、同六年には日本宗教平和会議が開かれている。

現在、神道(神社神道・教派神道)、仏教、キリスト教、新宗教の極めて多くの宗教集団が加わる宗教協力組織として日本宗教連盟が存在し、イラク戦争の折などは平和のための声明を発表するなどしている。これは昭和二十一年(一九四六)に結成されたものだが、その前身は同十八年に国家主導のもとに結成された大日本戦時宗教報国会である。だが、単に国家主導というだけではなく、上に述べた日本宗教大会などによって醸成された宗教集団相互の自発的宗教協力の機運があった。

戦前の宗教協力は、このように国家のための協力という性格を濃厚に含み持っていた。日本が宗教協力の先進国であると自覚するにしても、それは宗教集団が協力して国家に奉仕せざるを得なかったという側面があることも忘れてはならない。

多様な国や地域を背後に持つ宗教集団間の協力は、この国家のための協力よりはるかに困難なことだろう。そのような自覚を持って、アジアの諸国・諸地域の宗教集団との協力をさらに活発に進めていきたい。その担い手となることは、早くから近代化に取り組んだ代表的な非西洋国としての日本の宗教集団にふさわしいことだ。そしてそれは、日本の宗教界による独自の国際貢献として世界の歴史に残るに違いない。