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宗教文化士制度へ宗教界も関わりを

2010年9月23日付 中外日報(社説)

日本宗教学会および「宗教と社会」学会に所属する研究者を中心とする約三十人の大学教員が、三年間にわたって検討してきた宗教文化士の制度が、いよいよ来年からスタートする運びとなった。宗教文化教育推進センターが来年早々設立され、第一回の認定試験が五月もしくは六月に実施という方向で固まってきた。

この制度にはとりあえずこの二つの学会が連携するが、「宗教と社会」学会では今年六月五日の会員総会で、また日本宗教学会では同じく九月四日の会員総会で、それぞれこの「宗教文化士」認定制度の連携学会となることが承認された。

認定試験が開始されるに当たって、当面は国立三大学、私立五大学の合わせて八大学が、いわば「パイロット校」という形でかかわりを持つ。ほかにも一、二年のうちにこの制度を取り入れることを検討している大学が三、四校あるという。ただ認定試験はパイロット校以外の学生でも、一定の条件のもとに受験が可能な仕組みになっている。

この制度を検討したメンバーは、この間、さまざまな調査・研究を行なってきており、それらは報告書として刊行されている。またウェブ上でも研究内容と研究成果を公開しており、次第に社会的にも注目されるようになっている。

平成二十年秋の段階で、この制度に対する学生のニーズ調査が実施され、三十八の大学の五千五人の学生からの回答を分析した報告書が刊行されている。宗教文化士の資格の概要を説明した上で、この資格を取りたいと思うかどうかを質問した結果を見ると、「とりたいと思う」という積極的な回答は七百二十七人(14.5%)、「条件(単位、取得費等)によってはとりたいと思う」という比較的肯定的な回答が二千百四十七人(42.9%)であった。合わせると57.4%は、この制度を肯定的に受け止めている。

また宗教学関連の学科や講座、あるいはコースなどを持っている大学を対象にした、カリキュラムの現状調査も行なわれ、宗教学関連の講義・演習がどの程度あるかが報告された。国外における宗教教育の実態調査を踏まえて、日本における現状との比較をする国際シンポジウムも、二十一年夏に国立民族学博物館において開催されている。国外の研究者は、日本におけるこの制度が、どのような展開となるかに強い関心を抱いたとのことである。

学生の側に一定のニーズが存在することや、宗教文化教育に対する社会的な要請も一定程度あることが分かってきた。さらに大学教員がネットワークを形成して教育を考えるべき時代になっていることの認識も強まり、宗教文化士制度をスタートするという決断がなされたようである。

画期的な試みといえるが、それだけにおそらくしばらくは試行錯誤的な段階を見込まざるを得ないだろう。宗教文化の基礎的な知識とか、ものの見方をどうやって学生たちに養ってもらうかは、大きな課題として存在する。関係する大学に限らず、多くの教員が教材の共同開発とか、教育法についての情報交換といったものを積極的に推進していくことが欠かせない。

同時に、宗教界もこの試みへのかかわりを検討することが好ましいのではなかろうか。宗教について否定的な見方を持つ人が少なくなく、それも基本的な知識なくして先入観で遠ざけている場合が多いのが、今の日本社会である。宗教文化について教えることの重要性は、宗教界も感じていると思われる。

どのようなことについての学びを深めたらいいのか、その学びに宗教界としてどのようなコンテンツ提供や協力ができるのか。そうした観点からの議論がこれを機会に広まれば、日本社会が「宗教」についてもっと正面から向き合うようになるための推進力として働くに違いない。