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外国のコインの賽銭を生かす道

2010年6月29日付 中外日報(社説)

先日のP新聞の大阪本社版に、要旨次のような記事があった。京都や奈良を訪れる外国人観光客の増加に伴って、社寺の賽(さい)銭箱に外国のお金が投じられるようになった。大部分はコイン(硬貨)だ。紙幣なら銀行で両替できるが、コインは交換してもらえない。中には重さ百キロ以上ものコインを持て余している社寺もある――と。

京都府神社庁や、有名な拝観寺院の一部は、日本ユニセフ協会の「外国コイン募金」に寄付をして、活用しているという。

歴史は繰り返す、と思った。実は年号が昭和から平成に変わるころ、同じP新聞大阪本社版で、似たような記事を読んだことがあるからだ。そのころ、社会面に特設されていた読者相談欄に、要旨次のような投稿が寄せられた。

「近ごろ、神社の賽銭箱に外国コインが投げ込まれるようになった。宮司さん方は困っている。中にはコインを捨てている神社もあるらしい」

その欄の担当記者は、何とかならないかと気を配ったのだろう。「コインの両替はお取り扱いしていません」との銀行側の談話も併記していた。

これを読んで「もったいない。捨てるくらいなら、私たちに寄付して」と名乗りを上げた宗教団体があった。キリスト教の一派、セブンスデー・アドベンチスト教団だ。十九世紀に米国で設立された教派で「三日でたばこがやめられる」運動もしている。

日本では信者一万人と、規模が小さいが、本部のアメリカをはじめ多くの国に教会があり「アドラ(ADRA)国際救援機構」という活動部門を持つ。日本の「アドラ・ジャパン」をはじめ百二十四ヵ国に支部があり、どこの国のコインでも有効に役立てることができる。大阪の神社のお賽銭は、病気や天災などで苦しむ人々を救う資金として、活用の道が開かれた。

ところで、セブンスデー教団のコイン活用がP新聞の記事になったのは、これが最初ではなかった。それより約三年前、同紙神奈川県版に「海外旅行で使い残した外国コインを持て余している人々が県内にいる」との記事が掲載された。この時は首都圏のセブンスデー教団の牧師が、P新聞の横浜総局を訪れ「アドラに寄付を」と要請した。

その要請がP紙東京本社版に紹介され、反響を呼んだ。一九八五年にメキシコで大地震が起こった時、静岡県を中心に三百万円相当分のコインが寄せられ、現地に応急住宅を四十戸建設することができた。当時、開園したばかりの東京ディズニーランドからは「祈りの泉」に沈んでいた約二十ヵ国のコイン千八百枚が寄託された。

東京本社のこの情報が、ストレートに大阪本社に伝わっていたら、賽銭問題は別の形で報道されていたのではなかろうか。

それから既に、約四半世紀。恐らく今回の、奈良や京都の賽銭問題を取材した記者は、二十数年前の自分の社の紙面で、そんな経緯があったとは知らないで記事を書いたような印象を受ける。無理もない。四半世紀たてば第一線の記者はほとんど入れ替わっている。その事情はセブンスデー教団も同じことだ。

関西地区の同教団のある教会に電話で問い合わせると「アドラを通じての国際救援活動は続けています。でも今はすべて日本のお金で献金します。外国のコインが寄せられることは、めったにありません」との答えだった。教団の牧師も新聞社同様、大多数が入れ替わっているようだ。

とはいえ、二十余年前も今も、こうした問題がP新聞に報じられることが多いのは、同紙が国際問題に関心を持つ記者によって取材・編集され、同じ意識を持つ読者に支えられているからではないか。日本の社寺も、外国のコインを生かす道を積極的に探ることを期待したい。