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テーマパークの盛況に思うこと

2010年6月19日付 中外日報(社説)

「わが家に近い千葉県浦安市舞浜には、テーマパークの東京ディズニーリゾート(東京ディズニーランドと東京ディズニーシー)がある。昭和五十八年にまずディズニーランドが開園した時は、五年間続くだろうかと危ぶむ人もいた。だが平成十三年、隣接地に開園したディズニーシーともども、客足は順調に伸びているようです」と、浦安市民のAさんは言う。

Aさん自身、何度も入園したし、長年、浦安市に住んでいれば、訪れる人々の声が聞こえてくる。「東京ディズニーリゾートは、本当に客を大事にしていると感じますね」

開園前の工事中に、技術者がこぼしていた。「園内の舗装をするのに、あの材料とこの材料をどの割合で混合せよと、こと細かく指示された。舗装工事はオレたちプロに任せておけばいいのに」と。

ところがオープン後、グリーンの色美しく舗装された園内を歩いて、Aさんは驚いた。「歩き疲れる」感覚がほとんどない。漏れ聞いたところでは、人間工学のデータから「骨に負担のかからない柔らかさと、筋肉が疲労しない硬さ」の混合比を定めたという。

その数値は企業秘密らしいが、Aさんに同行したゼネコン関係者は「舗装一つとっても、客本位の立場から、惜しみなく建設費を投じていることが分かる」と感想を述べた。

何度も通ううちにAさんは、園内の建物から外へ向かって、数多くの地下通路が通じていることに気付いた。補充する商品を運び入れたり、ゴミを搬出したりの作業や、従業員の交代などは、すべて地下通路を利用する。だから一部の百貨店のように、客に通路を譲らせて物を運ぶ光景は全く見られない。

また他の遊園地のような「迷子をお預かりしています」「何番ゲートにご集合を」などの場内アナウンスは聞こえない。場内放送が役立つのは数人か数十人だが、その騒音が多数の入園者の心を乱すから、との配慮のようだ。

人間は、お化け屋敷やジェットコースターなどでスリルを味わいたがるもの。しかし「何度でもスリルを体感してみたい」と思わせるには、その恐怖感を八〇%程度にとどめておくのがよい、との配慮がなされているという。

園内の表示はすべて米国と同じ英語である。トイレは「TOILET」でなく「REST ROOM」なので、初めての入園者は当惑するらしい。そのトイレだが、女性用を数多く設置した。だからここでは、トイレ待ちの長い行列は見られない。

園内には日本を象徴する桜の木が少ない。桜の花が美しいのはせいぜい十日、散った花びらの清掃に意外に手間がかかる。清掃といえばゴミの量を極力減らすために、ゴミ箱はすべてふた付きである。捨てようという気持を抑える効果があるそうだ。しかもゴミのない園内風景は、入園者に快い印象を与える。

この二十七年間に東京ディズニーリゾートには、単純計算で日本人が平均四回ないし五回入園したことになる。"リピーター"が多いのだ。その理由をAさんは、大人も子供も楽しめる非日常的空間を演出し続けているからではないか、と考える。

「アメリカ生まれの企業なのに、客へのおもてなしの心が、他の施設より優れていると思います」

Aさんの一市民としての観察が、案外的を射ているかもしれない。

宗教をレジャーに短絡させるべきではないが"リピーター"対策を考えねばならないのは、宗教界も同じではないか。第十八代天台座主の元三大師・良源が住んだ比叡山の横川には、法を求める庶民が何度も訪れた。今も山道の至るところに「元三大師」と刻んだ石の道標があるのは、平安時代の"リピーター"の多さを伝えている。