ニュース画像
「誠」の隊旗を掲げた五重塔院で営まれた法要
主な連載 過去の連載 エンディングへの備え
苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版

チリ大地震から何を学ぶべきか

2010年3月9日付 中外日報(社説)

太平洋を隔てた地球のほぼ裏側、南米チリで先月二十七日発生した大地震は「対岸の火事」ではなかった。各地で一メートルを超える津波があったが、もう一つ肝に銘じておくべきは、同じプレート型巨大地震が日本近海でいずれ起こるという警告でもあることだ。二十数万人が犠牲になったハイチ地震と異なる意味で他人事ではない災害だ。人知を超える大自然の破壊的エネルギーにはできる限りの備えをしておくほかはない。

筆者は十五年前、神戸市東灘区で阪神・淡路大震災に遭った。「阪神」も未明だったが、今回の地震も、現地時間では午前三時すぎだった。闇に潜む魔物が不意に牙をむいたような恐怖感は、チリも日本も変わりはない。「対岸の火事」にしてはならない。

米国のニュース専門放送局CNN報は、早い時間帯から津波情報を刻々と伝えた。チリの沿岸で発生した大規模な津波は太平洋を「ジェット機の速度」で西に向かっていること、太平洋沿岸全域が危険であること。特に対岸の日本などでは高い津波が懸念されるとCNNは繰り返し報じた。津波は英語で「TSUNAMI」と表記される。国際語なのだ。

日本で日付が変わるころには、ハワイ諸島の住民が早朝からスーパーに買い出しに走る光景が再三放映された。

日本のテレビ局に何度もチャンネルを変えたが、NHKはオリンピック・フィギュアスケートの総集編を流し続けていた。他局も特番を組んだ所はない。六年前、インド洋大津波を起こしたスマトラ沖大地震の時にも感じたもどかしさだった。

日本のテレビ局が本格的に騒ぎ始めたのは二十八日朝、気象庁が大津波警報を出してからだ。幸いにも津波の到達想定時刻までには充分な時間的ゆとりがあった。NHKなど各局の取り組みが遅いとばかりは言えないが、高知県庁では防災担当職員五人が土曜日の二十七日夕方から夜通し警戒のため出勤していたことを記憶にとどめたい。

津波は結果的に気象庁の予想を下回ったが、広大な太平洋を隔ててはいても対岸とはつながっていることをあらためて認識させられた。津波が物も言わず大海を渡って来るさまを想像し、何か不思議な気持がしたものだ。地球は無限に広いようでいて実はそうではなかったという感覚だ。

その後の一部報道によると、各地で津波の警報や避難指示・勧告に従った人はわずかだったようだ。ある新聞には千葉県の漁港で、岸壁すれすれにまで上昇した海面を、その岸壁に立って見ている住民の写真が掲載された。いま少し津波のエネルギーが強ければ、写された住民も、写した記者も大変なことになっていただろう。今度のことが、いわゆる「オオカミ少年」にならないように願う。

今回のチリ地震はM(マグニチュード)8・8と伝えられた。前述のようにプレート型の巨大地震である。日本でM8クラスの地震は、明治二十四年十月二十八日に起こった濃尾地震(M8・0)を想起するが、これは直下型だった。親鸞聖人の月命日の二十八日に、真宗門徒の多い愛知・岐阜両県が被災したことが想起される。阪神・淡路大震災はM7・3だが、大都市直下型だったため大きな被害が出た。

チリと同タイプのプレート型巨大地震としては、昭和十九年の東南海地震(M7・9)、二十一年の昭和南海地震(M8・0)があり、特に後者は四国で地盤変動が起きるなど大被害があった。関東大震災はM7・9だが、震源地が陸地に近かった。

昭和のプレート型巨大地震はいずれも津波を伴い、到達時間もはるかに速い。地震は待ったなしで襲い掛かる。宗教施設の多くは高台にあると聞いたことがあるが、"油断"なき心構えが求められよう。