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仏教に親しみを感じてはいるが

2009年6月9日付 中外日報(社説)

日本人の宗教心に関する二つの全国的な意識調査の結果が、NHK放送文化研究所刊行の『放送研究と調査』四、五月号に掲載されている。一つは同研究所が一九七三年から五年ごとに行なっている「日本人の意識」第八回調査、もう一つは同研究所が参加する国際比較調査グループが宗教を中心に十年ぶりに行なった調査。いずれも昨年実施され、日本人の「仏教への親しみは増加している」と分析されているが、仏教界にとって必ずしも楽観できるものではない。

「日本人の意識」調査は、社会や生活に関し日本人の基本的な価値観や意見の変化を長期的に見る目的で、毎回十六歳以上の国民五千四百人を無作為抽出して実施している。調査項目は多岐にわたるが、宗教に関する設問は、宗教や信仰に関係することがらでどのようなことをしているか(宗教的行動)▽信じているものは何か(信仰・信心)の二つ。宗教的行動では「礼拝・布教」「墓参り」や「何もしていない」など、信仰・信心は「神」「仏」「聖書・経典の教え」や「何も信じていない」などそれぞれ八項目の選択肢を挙げ、回答をもとに意識の変遷や年齢、性別による差などを分析している。

国際比較調査は、十六歳以上の国民千八百人を対象に親しみを感じる宗教、宗教の役割など事細かな設問を設け、同様にいくつかの選択肢への回答を求めた。結果を要約すると――。

日本人はどの時代でも六割以上が墓参りをしており、あまり変化は見られない。お守り・お札を求めたり、おみくじ・占いや祈願するなど現世利益中心の宗教的行動は、調査開始から三十五年間で凹凸はあるが、徐々に増えてきた(例えばおみくじ・占いは一九%から二五%へ)。逆にお祈り、礼拝・布教や聖書・経典に触れるなど自己修養的な行動はむしろ減少傾向にある(例えば聖書・経典は一一%から五%へ)。

一方、宗教を信仰している人は全体の三九%。年齢層別では六十歳以上が半数以上、十六~二十九歳は二割以下で、世代によって大きな開きがある。信仰する宗教の内訳は仏教三四%、神道三%、キリスト教とその他が各一%。信仰していない、は四九%だった。

十年前と比べ仏教信仰者は四%増えた。ところが信仰の有無と関係なく、親しみを感じる宗教として仏教を挙げた人は六五%で、十年前より一六%も増えており、その開きが目を引く。仏教以外に親しみを感じる宗教は神道二一%、キリスト教一三%。イスラムは率で示せないほど少ない。親しみを感じる宗教がない人は二九%で十年前の四〇%から大幅に減った。

宗教の役割については「心の安らぎや幸福感が得られる」「困難や悲しみを癒やす」と思う人が、ほぼ半数を占めている。

このほか信仰に関し神、仏を信じる人は、オウム真理教事件で宗教アレルギーが起こった一時期を除いてそれぞれ三〇~四〇%で大きな変化はないが、「奇跡を信じる」が若い層を中心にこの十年増加傾向で、昨年は一八%になった。

これらのデータをどう読み取るか。人によって異なるだろうが、考えておくべきは、この調査が行なわれてきた期間に日本は、高度成長からバブルの崩壊を経て昨年の金融危機を経験したことだ。別の視点で言うと、拝金主義のまん延による現世享楽的志向から「心の時代」へと移行し、生きにくい世の中で多くの人々が心の支えを求め続けてきたのではなかったか。仏教に親しみを感じる人が急増しているのも、その表われだろう。

だが、現実の仏教界がそれに対応できていないことが、それ以外のデータで示されているように思う。昨今、人の「苦」に向き合わない仏教界を批判する声が高い。こうした批判を仏教界は真剣に受け止めなければならないだろう。