ニュース画像
参列者が念仏を称える中、伊藤門主は1292霊の法名が記された御回向帳を1枚ずつ手繰った
主な連載 過去の連載 エンディングへの備え
苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版

核兵器廃絶への道

2009年5月9日付 中外日報(社説)

オバマ米大統領とメドベージェフ・ロシア大統領が四月一日、ロンドンで首脳会議を行ない、両国が核軍縮に一致して取り組むことを確認するとともに、第一次戦略兵器削減条約の期限が来る今年十二月までに後継条約を結ぶことなどを発表した。

さらに、四月五日にはオバマ大統領は、チェコのプラハで「核なき世界」を言明。その翌日から二日間にわたって核問題の専門家たちの国際会議が、カーネギー国際平和財団の主催によりワシントンで開催されて世界的な反響を見た。

しかしながら核に関して世界各国の事情はさまざまである。

核拡散防止条約(別称・核不拡散条約)は、一九六八年(昭和四十三年)に調印され、七〇年に発効。この年にわが国も調印し、七六年に批准している。中国は核兵器先制不使用を宣言している。核保有国のインド、パキスタンなどは核拡散防止条約に加盟しておらず、北朝鮮とイランは核開発途上にある。

一九四五年八月六日の広島原爆投下、八月九日の長崎原爆投下を受けて、戦後の五五年(昭和三十年)、核兵器不使用と戦争廃絶を訴えたラッセル・アインシュタイン宣言が発表された。

それに基づき五七年、カナダのパグウォッシュで開かれた科学者の平和会議(パグウォッシュ会議)は、ラッセル、アインシュタインの二人を中心に、わが国の湯川秀樹ら二十二人の科学者が核兵器廃絶をはじめとする科学と平和の問題を討議した平和会議であった。これは以後、世界の各地で随時開催されてきた。

このたびのオバマ大統領のプラハにおける発言は、ラッセル・アインシュタイン宣言の趣旨を原点としての核全廃を大前提とする核軍縮、核不拡散である。これは画期的なことだといわなければならない。

しかしながら先にも触れたように、世界の情勢は極めて厳しい。

言うまでもなく日本は世界唯一の被爆国である。そして核兵器を持たず、作らず、持ち込ませずの非核三原則を順守している。憲法第九条には「陸海空軍その他の戦力」を持たないことを明記して、世界諸国に先駆けて恒久平和の立場を明確に宣言している。

来年には核軍縮に関する国際会議が国内で開催される予定である。この機会にわが国が、世界に向かって核軍縮を強く訴えて核兵器廃絶への道を切り開いていかなければならない。非核のわが国だからこそ、それを主張する資格があり義務がある。

現今、米ロ両国合わせて約一万発の核弾頭を保有し、これに対して中国の保有数は二百発という。こうした核戦力の格差を解消しようとするなら、まさに核軍拡競争に火を付けることになる。

第二次大戦後の米ソ両国の冷戦当時は、仮に「第三次大戦」が起きて核兵器が使用されると、地球上に氷河時代をもたらし、人類も他のすべての生類も死滅し、地球は滅亡して死の世界と化すると警告されたものである。

冷戦時代は終わったが、今や核を主体とした世界的な軍備拡張の時代に入っているのではないかと懸念される。現在の核兵器の破壊力は、広島や長崎に投下された原爆を大きく上回る。それが実際に使われるようなことがあれば、結果は全く想像もつかない。

毎年、広島・長崎原爆投下の日には、両市長が核廃絶を世界に向かって発信している。しかし、核廃絶を訴える平和運動に参加する市民団体、組織は残念ながらいまだごく限られている。これは国民運動として世界に訴えていかなければならない。

わが国の宗教界が沈黙のままでいるのも理解し難い。仏教の戒律の第一は不殺生戒―殺すことなかれ―である。その立場からは、大義名分や正義を旗印としたいかなる戦争も容認されない。殺人は人間の罪悪の極限に他ならず、戦争は大量殺人の行為そのものだからだ。そして、現代において、人類が大量殺戮の愚かな力を所有していることを象徴するのが核兵器なのである。