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パレスチナ紛争いま一つの視点

2009年2月14日付 中外日報(社説)

人の憎悪の深さに暗たんとする。昨年末からのパレスチナ・ガザ地区へのイスラエルの激しい攻撃だ。空爆は二千数百回に及んだという。

爆弾がさく裂する中を逃げ惑う住民や、負傷して病院に担ぎ込まれる子どもなど、外国通信社配信の写真で攻撃はほぼ無差別に行なわれているのでは、と危惧した。停戦後に、日本のメディアの記者が現地に入り、被害の状況が分かってきたが、事態は懸念した通りだった。死者千三百人以上、その四割は女性や子どもという。

多くの民家が破壊され、五万八千人以上の避難民が出た。国連が運営する学校や食糧備蓄倉庫まで被災、非人道的とされる兵器も使われた。国連の潘基文事務総長が「胸が張り裂けそうだ」と、その惨状を語ったと伝えられる。

イスラエルは国民一人がテロで殺されると「百人のパレスチナ人を殺す」報復を公言しているそうだが、侵攻に絡むイスラエル側の死者は民間人三人、兵士十人。皮肉にも計ったような結果だった。

このような憎悪に満ちた「報復の連鎖」がいつまで続くのだろうか。

イスラエルとパレスチナ人の宿命的な衝突の背景をほぼ一年前にこの欄で述べた。繰り返しは控えるが、そこで少し触れた、対立をいっそう深めるイスラエルの占領政策はその後も何ら変わっていない。パレスチナ人の生活圏を分離壁で分断したり、検問所で実質的に人や物資の行き来を閉ざしたりするなど、構造的暴力とでもいうべき差別政策である。

その非情さを米国のカーター元大統領が「(かつての南アフリカの)アパルトヘイト(黒人隔離政策)よりひどい」と語ったと伝えられる。

しかし、悲劇の繰り返しは、いずれ断ち切らねばならない。宗教界でも、世界宗教者平和会議国際委員会が和解への努力をしている(一月二十九日付本紙)ようだが、筆者は最近、問題の根がもっと別のところにもあることを教えられた。

パレスチナ問題の報道がライフワークの旧知のフリー記者から、イスラエル側のパレスチナ人への過剰報復の底には、高い人口増加率へのおびえが潜んでいると聞かされた。反イスラエル感情の強いイスラム諸国に囲まれている上、座視していると将来、パレスチナ地域でもユダヤ人が少数派になってしまうという潜在的な不安感だ。

人口学にユース・バルジという言葉があるそうだ。国の年齢別人口構成で、例えば団塊の世代のようにある年齢層の人口が極端に膨らんだ部分がバルジ。従ってユース・バルジは、ある国で若者が過剰な状態を指す。新潮社の近刊『自爆する若者たち』でそのことを知った。同書は歴史的にユース・バルジが発生した時代は紛争や戦争が絶えないという。

若者たちが自分の「居場所」を求めて厳しい競争をするのが原因で、現代はパレスチナ自治区やアフガニスタンをはじめイスラム圏の多くがユース・バルジ状態にある。著者のグナル・ハインゾーンという人はポーランド出身、ドイツで集団殺害問題などを研究している学者である。

パレスチナについて、少し具体的に内容を紹介すると、パレスチナ人とイスラエルのユダヤ人はそれぞれ四百三十五万人、五百十万人(〇三年時点)だが、十五歳未満の年少者は二百五万人(対人口比四七%)と百二十万人(同二四%)で数は逆転する。

ガザ地区(百五十万人)の年少者の比率は約五〇%で、人口増加率は世界トップレベルの四%以上。つまり戦闘能力の高い若者が、これからもイスラエルを引き離してどんどん増えていく、と同書は述べているわけだ。

「テロも戦争も若者がするもの」なら、この現実をどう受け止めるのか。処方せんの一つは国際社会が若者たちの受け皿の役割を飛躍的に高めることだが、困難は自明だ。人の出生という根源的な問題をはらみ、宗教界にも無縁ではない問い掛けのように思う。