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敬意と寛容の年に

2009年1月24日付 中外日報(社説)

国連は昨年、二〇〇九年を国際和解年だと宣言した。その国際決議には「敬意と寛容」というキーワードがあるとされる。

しかるに現実にはイスラエルとガザ地区のハマスとの武力抗争が激化して昨年末以来、ハマスのイスラエルに対するロケット弾攻撃を契機にイスラエルのガザ空爆が繰り返されて年を越した。ガザの子どもを含めた民間人の死者は、すでに九百人近くに達したと報道される。今月十八日にはようやくイスラエルが「停戦」を宣言、ハマスも条件付き停戦に入ったが、散発的な攻撃と報復の報道もあって、事態は流動的だ。

イスラエルの起源は古く、『旧約聖書』に見える。幾多の歴史的変遷はあったが、その宗教はユダヤ教として発展した。そしてユダヤ人が建国した共和国が成立して現存する。

パレスチナの位置は、西アジアの地中海南東岸地区である。カナンともいわれる。第一次世界大戦後にシオニズム(パレスチナにユダヤ国家を建設しようとする運動)の進展とともにユダヤ人の移民があった。一九四八年、イスラエルは独立宣言をした。そして一九六七年にはイスラエルは、ヨルダン川西岸地域とガザ地区を占有した。ガザはエジプト北東端およびその地方にある都市名でもある。九四年にはヨルダン川西岸とともにガザ地区はパレスチナ人の自治地域となった。

イスラエルと、パレスチナ自治区であるガザ地区との対立抗争の構造は、極めて複雑である。イスラエルはユダヤ人国家として認められ米国が強く支援してきた。他方、ガザ地区はイスラム過激派のハマスが支配権を握り、その支援国はイラン・シリアである。しかも、ヨルダン川西岸はイスラム穏健派ファタハが支配してハマスとの間でイスラム教内部での主権争いをしている。

ところで米国とイランとは敵対関係にある。そして宗教的にはユダヤ教とイスラム教とは対峙している。イスラエルとガザ地区に対する支援国家はそれぞれに武器援助をし、双方の戦力を助長して、火種に油を注いでいるのが現状である。

イスラエルはガザ地区を攻撃するのは報復のためだとして自衛権の主張を正当化する。だが、双方が武力行使という力の論理を唯一の解決策とする限りは和平は望みがないのは明白だ。

「われわれは怨みをもつ者たちの間にあって怨みを抱かず、心安らかに生きよう」(『法句経』一九七)

「勝利者は怨みを生じ、敗れた者は怨み悩んで暮らす。静安を得た者は勝敗を捨てて安らかに生活する」(『法句経』二〇一)

釈尊がコーサラ国の舎衛城に居た時、コーサラ国王パセーナディはマガダ国王アジャータサットゥの侵略を受けた。反撃したが、コーサラ国は敗れた。

それを聞いた釈尊は、コーサラ国王は敗者として苦しんで眠るだろう、と言った。その後、再びアジャータサットゥ王はコーサラ国を侵略したが、このたびはパセーナディ王が勝利して、アジャータサットゥ王を生け捕りにした。釈尊は、比丘たちに告げた。

「自分の利益になる間は、人は他を奪い取る。そして他の者たちが奪い取る時に彼は奪い取られ、自分も奪い取る。(中略)このように行為の車は回り、彼は奪い取り他から奪い取られる」と。

釈尊の時代から二千数百年たつ。四度にわたる中東戦争ではイスラエルが勝利し、あるいは優位を占めた。けれどパレスチナの反撃を受けて双方の対立抗争は絶えることがない。

二十一世紀の今日、人類の科学技術文明は驚異的に発達して宇宙時代の到来が予告されている。だが地球上の紛争と局地戦争は絶えることなく反覆されている。人類の英知が発揮されないのはなぜか。

われわれは釈尊が説く恒久平和の理想に限りなく近づく努力を怠っているのではなかろうか。