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ガンジー遺訓に学んだオバマ氏

2009年1月15日付 中外日報(社説)

米国では二十日「チェンジ」を旗印に当選した民主党のバラク・オバマ氏が、第四十四代大統領に就任する。八年ぶりの政権交代である。

就任式で祈祷する牧師は長年にわたり大衆伝道者のビリー・グラハム氏が務めてきたが、今年からは南部バプテスト連盟のリチャード・ウォレン牧師が担当するという。宗教でもチェンジするわけだ。

米国CNNテレビの世論調査では、就任前のオバマ氏の支持率は八二%であるという。毎日新聞によるとジョージ・ブッシュ氏(共和党)は六五%、ビル・クリントン氏(民主党)は六七%だった。

マハトマ・ガンジーの事跡を研究している新潟県上越市の片山佳代子さんによると、オバマ氏の「チェンジ」はガンジーの「世界に変化をもたらしたければ、自らがその変化になれ」との言葉に啓発されたものだそうだ。昨年十月二日のガンジーの誕生日に、オバマ氏がその旨をガンジー財団に伝えたという。

昨夏のサブプライムローン破綻に始まった米国の不況は、日本をはじめ各国経済の屋台骨を揺るがした。自動車産業のビッグ3が倒産の瀬戸際に追い込まれたいま、米国民は、民主党支持者はもとより、共和党支持者までもが「オバマ氏が当選してよかった」と感じ始めているのではないか。オバマ氏こそが大声で「チェンジ」と叫びうる人物だからだ。

これまで米国の大統領になる資格があるのは「WASP」に限られるといわれてきた。白人(W)で、アングロサクソン(AS)であり、プロテスタント信徒(P)ということだ。一九六〇年にアイルランド系でカトリック信徒のジョン・ケネディ氏(民主党)が第三十五代大統領に当選した時は、異例中の異例とされたものだった。

今回は黒人のオバマ氏が就任するのだから「WASP」の伝統はさらに大きくチェンジする。しかし、人種問題にこだわっていられないほど、米国の苦境は深刻である。ドルの権威は揺らぎ、中東やアフガンの戦火はやむ気配がない。国の内外ともに、まさに火の車なのだ。

今回の大統領選挙では、支持率で先行するオバマ氏に共和党のジョン・マケイン氏が追いつき、接戦と伝えられた。しかし経済危機の表面化とともにオバマ人気が急上昇し、そのままゴールを迎えた。

産経新聞に寄稿した英国の評論家、ジェフリー・スミス氏によると、マケイン氏の敗北宣言はまれに見る気品の高いものであったという。

「われわれの国はいま大変な困難に直面している。私はオバマ氏がわれわれをうまく導いてくれるよう、できる限りのことをすると約した。(政党間の)互いの溝を埋め、妥協し、繁栄を回復しよう=要旨」との内容である。

スミス氏は、共和党が敗北を受け入れた姿勢も称賛する。新政権への移行をできるだけ穏やかに進めようとの努力がはっきり見えるからだという。

オバマ氏もまた、主要閣僚候補に共和党系の人物を選び、これに応えた。事実上の挙国一致内閣を組織して"国難"を乗り切ろうとの構えを見せている。

朝日新聞の早野透コラムニストは「小泉構造改革が『敵味方』をつくる政治構図だったのに対し、オバマはブッシュ政権の残した国民の分裂を癒やすべく登場した」と評価する。早野氏はその一方で、日本の国会では、与野党の党利党略の思惑がぶつかり合い、真に国民に寄り添っていこうとする姿勢が見られないとも指摘している。

昨年十二月の本欄で、政界に大白牛車的政策を掲げる政治家の出現を期待する旨を記した。二十日のオバマ氏の就任演説は、法華経譬喩品の長者の声のように世界の政財界に響き渡るであろうか。