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お役所の経理の"煩悩"は根深い

2008年6月3日付 中外日報(社説)

最近の総理大臣には、人気が低迷気味な人もいるようだが、昭和四十年代後半に約二年間在任した田中角栄氏は、その経歴から"今太閤"と呼ばれ、独特の人気があった。さらには"角さん"の愛称で呼ばれることも多かった。

ある新聞の編集者が、ゴシップ記事に「角さん大喜び」と見出しをつけたら、政治部出身の編集局長からしかられた。「一国の総理を"角さん"呼ばわりするのはよくない」と。

"角さん"退陣から三十余年たった今も、時に各紙の政治評論には物足りなさというか、歯切れの悪さを感じさせられる。自己規制めいたものがあるのかもしれない。むしろテレビに、よくぞここまで報道したと感じることがある。

先年、この欄で紹介したことだが、大阪市のある区役所で、ほぼ全職員が定刻に退庁しているのに、誰にも超勤手当が支給されていることを指摘したのは、大阪の民放局だった。

それがきっかけで、中央官庁でも地方自治体でも、訳の分からない手当や現物が支給されている実態が明るみに出た。「新聞が報道すべきことを民放に先取りされた」と反省する新聞記者がいたとか。

ところが最近、同じ民放局が、大阪市と横浜市のゴミ処理行政の差を取り上げた。市民に分別収集の大切さを訴え続けた横浜市は、これまでゴミとして出されてきたものを、資源として再利用する道を確立した。そのためにゴミの量は急減し、焼却工場の数を減らすことができた。

これに対し大阪市は、資源再利用率は低いものの、ゴミの総量は減っている。それなのに焼却工場は減るどころか、むしろ増設を計画しているという。そのための広い用地も準備しているそうだ。

なぜ増設する必要があるのか、と記者が問うと、大阪市の担当者は、収集のルートが短いほど住民サービスが向上すると答える。視聴者の中には、弁解のための弁解と受け取る人もいたのではないか。

市政の裏事情に詳しい人が画面に現われて「すべて利権ですよ。清掃工場を建てる側も、そのメンテナンス(維持保全)にかかわる側も、それぞれ利権が絡んでいる。役所には、職員を減らさなくてもよいという事情が絡む」と言う。続いて横浜市の中田宏市長が登場し「どこの市も、横浜のマネをしたらいいんですよ」と笑う。

現職の市長が他市の行政批判をするのは、よくよくのことだ。就任以来、各部局の裏金摘発に手いっぱいだった大阪市の平松邦夫市長は、古巣の民放局から、新たな課題を背負わされた形である。

別の民放局は、国土交通省の一部職員が、連日のようにタクシーで帰宅している実態にメスを入れた。まだ電車が走っているのに、タクシーに乗る。料金は、実際の運賃の二倍近い。カメラが追跡すると、都心のクラブの近くから"別人"を同乗させているらしい。だが会計の責任者は「タクシー利用は適正に行なわれていると理解しています」と言うばかりだ。ほかにもこの職員と同じようなタクシー利用者が多い、とテレビは指摘する。

ついに国土交通省もかばいきれず、年間数百万円も使ってタクシーを乗り回した職員を「口頭で厳重注意する方針」だそうだ。タクシー代を返納させるつもりはあるのかどうか。テレビによるとタクシー代の財源はガソリン税の暫定税率絡みというのだが。

これらの諸問題をはじめとして、暫定税率の不合理さだけでなく、後期高齢者の健保問題も、新聞はこれまでほとんど追及することがなかった。一国の総理を"角さん"呼ばわりしなかったように、一国の政策を軽々に批判するのを控えたのか。お役所の経理の"煩悩"は深い。かくてはならじと指導力を発揮する編集局長はいないものか。