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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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「特定商取引法」の宗教法人への適用

2008年4月10日付 中外日報(社説)

経済産業省は三月二十六日に、特定商取引法違反の疑いで千葉県袖ケ浦市に本部を持つ宗教法人「幸運乃光」に対して三ヵ月間の勧誘や新規契約の業務停止を命じた。幸運乃光が行なっていた「宗教的活動」に対し、不実告知などに該当する内容があったと判断したからだ。昨年七月に施行された特定商取引法に関する改正政令が、初めて宗教法人に適用されたことで注目される事件である。

幸運乃光は「高島易断総本部」「高島易断崇鬼占相談本部」などを名乗っており、「幸運乃光成龍寺」としてホームページも開設している。易断と合わせて、仏具販売や祈願といった行為を行なっているとされる。今回、これが訪問販売に該当すると判断されたわけである。

最初は二千円の鑑定料であるが、「神様に拝まなければ家族全員が地獄に落ちる」などという言い方で相手を不安にさせる。そして数百万円もの祈願や供養塔の購入を申し込ませるよう仕向ける。こうした行為のためのマニュアルを作成していた。これら一連のことが、業務停止の理由にされた。

すなわち、特定商取引法に基づき、経済産業省が定めた営業所以外での易鑑定による助言や指導について、これが「訪問販売」にあたると見なされたのである。このように、宗教法人たる幸運乃光の行為が、訪問販売というカテゴリーとして見なされる事例が生じたということは、宗教界にとってかなり重大な意味を持つ。

今回、経済産業省が業務停止のよりどころにしたのは特定商取引法の第八条一項の規定だ。「販売業者」が規定に違反する行為をしたと判断したのである。また同法の第六条には、訪問販売の禁止行為が示してあり、商品の種類、性能、品質等に関して経済産業省が定める事項に不実のことを告げてはならないなど、消費者を守るための事項が列挙されている。密室状態での勧誘が禁じられているし、相手に告げた事項の裏付けとなる合理的な根拠を示すことを求められる場合もある。

幸運乃光の場合、最初に勧誘したときには二千円という鑑定料が提示されたけれども、実際にはそれ以外の高額な料金設定があった上、それを相手に明らかにしていないということ、また根拠もないのに祈祷に絶大な効果があるように思い込ませていたということなどが不実告知にあたる、という判断になっている。

年金生活者である六十~七十歳代の人々に対しても、数百万円の「契約締結」を勧誘し、断わっても強く勧誘を続けたという。また、易鑑定室をほぼ密室状態として、勧誘を行ない、いわゆるクーリングオフに当たる要求にも応じなかったようだ。こうした行為に経済産業省がストップをかけたことは、かなりインパクトがある。

このように極端な事例の場合、宗教法人に対して特定商取引法を適用するということに対し、社会的には違和感がなさそうである。だが現実に、宗教の布教の場面では、それほど強引でなくても、若干の不安をもたらすような入会の勧めなどがないとは言えない。「……しないと地獄に落ちる」といった脅しともとれる表現は別としても、一般的に「……しないと先祖が浮かばれません」程度の語り方がされることはあるのではないか。

今回批判されたような、「運気が下がっている」とか、「霊が見える」というような鑑定士の言い方も、世間ではさほど珍しい部類ではない。占い師や霊能者がそうした発言をする番組が、テレビで公然と放映されているのは周知のとおりである。

この法律の適用が今後どのような対象に対してなされるのかによって、これに類する問題に対する行政側の判断基準が少しずつ明らかになろう。宗教界の側もこの種の活動に対しては、宗旨・教義を踏まえた判断基準を検討する必要が高まるのではないだろうか。他人事と聞き流すような事柄ではない、と思われるのである。