ニュース画像
叡南覚範門主からおかみそりを受ける参加者
主な連載 過去の連載 エンディングへの備え
苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版

霊能者番組の影響

2008年2月19日付 中外日報(社説)

いわゆる霊能者と称される人が、毎週のようにテレビに登場し、芸能人らを相手に霊視をしたり、前世はこうであったなどと言う国は、世界でどれくらいあるものだろうか。

日本では一九九〇年代前半には、こうした霊能者が登場する番組がめじろ押しであったが、一九九五年のオウム真理教による地下鉄サリン事件以後、潮が引くように姿が見えなくなった。しかしだんだんと復活し、ここ数年は、テレビ局のこの種の番組に対する扱いは、オウム真理教事件以前とほとんど同じようなスタンスになってきているようだ。

こうした番組について、全国霊感商法対策弁護士連絡会が、社団法人日本民間放送連盟に対して、行き過ぎのないようにという趣旨の要望書を、昨年の二月に提出している。最近のテレビ番組が超能力や心霊現象などを喧伝し、安易に霊魂観や死後の世界についての特有の考え方を断定的に述べていることが、霊感商法被害予備軍を生み出しているという認識に立ってのものである。

また今年一月には、フジテレビ制作の番組に対し、放送界の第三者機関である「放送倫理・番組向上機構」放送倫理検証委員会から批判が出た。霊能師タレント中心の企画で、出演者への配慮を欠き、制作上の倫理に反するというのが批判の趣旨である。

番組自体にやらせ的側面があれば批判されてしかるべきだが、全国霊感商法対策弁護士連絡会が重視しているのは、むしろこれが与える社会的影響である。番組の中では、霊能者と称する人々が相手を脅すような言動というのはあまり見られない。しかし、「霊能者が語る言葉は真実である」というメッセージをテレビ局が発信し続けることは、霊視などと称してことさら不安を煽り、高額な謝礼を支払わせたり、霊を祓うためだと言って高額な物品を買わせるといった行為をやりやすくしている可能性がある。これに対して強く警告している。

番組の与える影響というものを実際に検討するのはなかなか難しいことであるが、その影響について議論する時に参考になる一つのデータが最近出た。昨年四~六月に行なわれた第九回学生宗教意識調査の結果であり、これを見ると、学生世代へのこうした番組の影響度が分かる。

例えば、「オーラの泉」という番組が「テレビ局のやらせと思うかどうか」という質問に対し、「ほとんどやらせである」と答えた人は二七%、「ときにはやらせがある」と答えた人は五三%、「やらせはない」と答えた人が一七%、残りは無回答であった。多くの学生はある程度の"やらせ"を感じながら見ているが、「やらせはない」と答えた人の割合も無視すべきではない。特に女性は二一%、ほぼ五人に一人は"やらせ"はないと答えている。

また、この番組で語られる霊の話について信じるかどうかという質問に対しては、「信じる」が一四%、「どちらかといえば信じる」が三二%と、肯定的にとらえる人が四六%に達する。

詳細は井上順孝編『第4回日韓学生宗教意識調査報告』(国学院大学)に掲載されているが、このような実態調査の結果は、テレビ局の影響を議論する時の重要な資料となるといってよかろう。

霊能者が登場する番組については、所詮は娯楽番組なのだから、目くじらを立てる必要もないという意見がある。中には、こうして宗教情操が養われる、という肯定的意見さえ見られることもある。

日本民間放送連盟放送基準の「7章宗教」には、「宗教を取り上げる際は、客観的事実を無視したり、科学を否定する内容にならないよう留意する」という項がある。また、娯楽のつもりで放映していても、番組から大きな影響を受ける人が少数ながらいることを、前記調査は示している。放送局はこうした現実を踏まえてもらわなければなるまい。

年齢を重ねると、人は経験を生かせる割合が多くなる。しかし、若い人たちはマスメディアの情報に左右される度合いがずっと大きい。宗教界は、こうしたテレビ番組を制作する側の意識について、それを厳しくチェックしていく役割も担っているのではあるまいか。