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心のゆがみを映すマネーゲーム社会

2008年2月16日付 中外日報(社説)

マネーゲームが行き過ぎて、世界中がおかしくなってきたようだ。昨年来、経済ニュースに「サブプライム」という耳慣れない言葉が現われたが、今年もこの問題で株式市場は混乱を極め、株価が乱高下している。それに関連する新聞記事が、経済面ばかりでなく一面にもたびたび登場する。筆者の通勤途上にある証券会社の前でも、思いつめた表情の投資家が株価の電光掲示板を取り巻く光景を毎日のように見かける。年金生活らしき年配者も目につき、昨今、株式投資が特段珍しくもない資産運用手段になっていることをうかがわせる。

「一億総投資家」とでもいえるのかもしれない。しかし、株価の動きに国民の多くが一喜一憂する様は、どこか不健全だ。

景気の浮き沈みは筆者もかかわっているボランティア団体の寄付金収入に響くため、時たまテレビの経済専門チャンネルを見る。そのたびに、何かしら違和感を持つのである。

早い話が、冒頭の「サブプライム」だ。米国の低所得者向け(サブプライム)住宅ローンが貸付債権として証券化され、それが他の金融商品に混ぜて米国はじめ世界の金融機関に大量に販売された。ところが米国の景気減速でローンの焦げ付きが続出、証券を購入した金融機関に巨額損失が出て金融不安が起こり、世界中でパニック的に株価が暴落した。

マスメディアではそのように解説されているが「もともとサブプライムは貧困ビジネスだ」と批判する専門家もいるようだ。例えば岩波新書の『ルポ 貧困大国アメリカ』(堤未果著)によると、その実態はかなり深刻だ。

サブプライムローンは、家賃を一年間に二回以上延滞したり、自己破産歴があったりする信用度の低い所得層を対象に、返済能力を無視し、当初は返済負担を軽減、数年後に高負担に変わる仕掛けで貸し付ける。マイホームを夢見る低所得層や黒人、ヒスパニック系の不法移民などを夢中にさせる略奪的な貸し付けといえる。

景気がよく住宅の値上がりが続いている時は、値上がり期待分を担保に新たな借り入れができるが、かつての日本のバブル期のように値上がり神話が崩れると一気に返済不能に陥る。つまり債権としてはハイリスクだが、金利が高く利回りが大きいため、各種金融機関が飛びついた。

しかし、債務者はやがてローンの支払い不能で家を銀行に差し押さえられる。その比率が全米一というカリフォルニア州のある町は、ゴーストタウンのようだ――などと同書はリポートする。要するに、金融業者が利益をはじき出すため錬金術まがいに貧困層を食い物にした商法というわけである。

一方に家を追い立てられる膨大な貧困層がおり、一方では五十億円を超えるボーナスをもらうウォールストリートのCEO(最高経営責任者)がいる。今やマネーゲームの国と化した感のある米国社会の一端をのぞかせるが、それはそれとして筆者はグローバル化で日本も随分米国流に染まってきたことに危惧を持つ。

話題を経済専門チャンネルに戻すと、アナリストという肩書を持つ解説者の中には「株価低迷の大きな要因は外国人投資家の日本市場離れ。その原因の一つは参院選で衆参の(与野党)ねじれが起きたからだ。外国人投資家は政局の不安定を嫌う」「国の政策が地方重視に変わると改革の後退と思われ、日本市場は投資家に敬遠される」「某企業はさらなるリストラを実行しないと株価アップは難しい」などと訳知り顔で分析する人もいる。

株価上昇のためには市民の自由な投票行動も、都市と地方の格差是正も、雇用の安定も、すべて犠牲にしなければいけないと言わんばかりである。

NHKの記者までが経済関係のスクープ記事を悪用してこっそり株を売買して利益を上げ、インサイダー疑惑で騒がれる拝金主義の時代である。欲望を捨てることを説く釈尊が現代にあれば、何と言うだろうか。