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宗門の未来展望の下不活動法人の対策を

2008年2月7日付 中外日報(社説)

全日本仏教会の機関紙『全仏』に、かつて文化庁の藤野公之宗務課長(当時)が「不活動状態の法人の解消に向けて」と題して寄稿し、包括法人の理解と協力を求めたことがある(第五百十八号・平成十八年五月)。宗務課は昨年二月にも、約四千と推定している被包括宗教法人中の不活動法人の"整理方策"等のマニュアルとして『不活動宗教法人対策手引書』を発行している。

こうした行政側の積極的な働きかけもあって、"青空寺院"などともいわれる不活動法人の解散や合併の問題について、包括法人である宗派の意識はかなり高まっているようだ。二日付3面に報じられた臨済宗妙心寺派の兼務寺院実態調査はその一例だろう。

ところで、不活動法人の"整理"はどの程度進んでいるのだろうか。文化庁が発行する『宗教年鑑』や『宗務時報』で宗教法人数の推移を調べてみると、おかしなことに気づいた。

例えば十五年末の宗教法人数は文化庁所轄分と都道府県所轄分を合わせて十八万二千九百八十五である。これが十六年末には十八万二千六百四十一になり、十七年末は十八万三千二百と変わっている。平成十六年の一年間に三百四十四法人減少し、十七年には五百五十九法人増加している計算で、この乱高下は理解し難い。

宗務課宗教法人室に問い合わせると、都道府県ごとに報告された数字の中に誤りがあり、それを単純に加算した結果だという。すべて足すと全人口の約二倍になる『宗教年鑑』の宗教信者数集計は日本人の重層信仰を示す一つの資料でもあろうが、法人数のような正確であるべき数字の食い違いは困ったものだ。

ともあれ、所轄庁の認証事務処理件数統計ならば信用できるとして、平成九年以降のデータを見てみると、合併・任意解散は十一年の三百七十五がピークだが、毎年ほぼ百四十以上ある。その他、宗教法人法八一条に基づく解散命令は九年の九十一が過去十年では最多で、こちらは年々減少している。一方で、設立登記も年七十~百程度あり、差し引きすれば宗教法人は毎年百~三百数十ずつ減少している計算になる。

以上述べてきたことは数の話である。しかし、無住寺院の問題は、数の問題ではない。行政から見て活動の実態が把握しにくい法人が多く、目障りだから減らせばよいといった単純な議論ではないはずだ。

むろん、宗教法人の売買(行政の分類による"不活動法人"に限らない)の現実はあり、不活動法人の整理数で実績を挙げた所轄庁は当然、担当者の努力が評価されるようだ。しかし宗教法人はそれぞれの由緒を有し、存立の因縁を持つ。宗門の見方が行政とは異なるのもまた当然だ。被包括の不活動法人数も文化庁は約四千と推定するが、宗派単位で厳密にチェックした数を集計してみれば違った結果が出るに違いない。

兼務寺院実態調査を行なった妙心寺派のケースを見ると、合併は再生の可能性を充分に検討した上で最後の選択である。現地調査、地元や関係寺院との協議など煩瑣な手続きも避けられない。一つ一つの事案が大きな決断なのだ。それでも同派の場合はかなり着実に対策を具体化しているとはいえるだろう。

無住寺院ではあれ、"整理"という言葉を使うのは大きな抵抗があるが、長らく放置してきたものは見直すべき時期に来ているのは事実だ。まず本格的な実態調査を実施した上で、為しうる対応を探る必要がある。さもなければ、包括法人は不作為責任を問われるだろう。

最後に重ねて強調すれば、行政側は不活動法人の数に注目するとしても、宗門にとって無住寺院問題は第一義的には"数"の問題ではない。宗門全体にもつながる質と内容の問題であって、質を維持できないなら宗教法人格の合併・解散という選択肢もあるということだ。行政とは別の視座で、宗門としての明確な中長期的展望のもと不活動法人=無住寺院問題にアプローチすることが望まれる。