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教育課程改革と道徳教育の行方

2007年11月13日付 中外日報(社説)

これからの学校教育が、どう変わっていくのか。児童・生徒の親たちは、真剣に見守っている。注目されているポイントが、二つある。一つは「ゆとり」教育重視のために削られた授業時間を再び増やして、学力全体の向上を図ること。もう一つは「道徳」を正規の教科にするかどうかということである。「道徳」は心の問題に通じる点が多いことから、特に宗教界が強い関心を示している。

ところで、小・中学・高校教育の改革に関しては、現在、二つの流れがある。一つは文部科学相の諮問機関、中央教育審議会(山崎正和会長)。もう一つは、政府の教育再生会議(野依良治座長)である。前者が比較的長い歴史を持っているのに対し、後者は昨年十月、安倍晋三首相(当時)の就任後に、政府に直属する形で設けられた。両者がどう違うのか、素人には分かりにくい点もあるが、学校教育は現状のまま放置できないから、広く学習指導要領を見直して、よりよい教育課程を作ろうということのようだ。

そのうちの「道徳」であるが、現在、小・中学校には週一時間、道徳を学ぶ時間が設けられている。しかし正規の教科ではない。高校には「道徳」の時間の規定がない。教科にすると教科書が必要だし、各人がどれだけ理解しているかを評価・採点しなければならない。中学校以上では担当教員の免許をどうするかの問題もある。

教科書を作るとして、どんな内容にするかは人それぞれ観点が違うはずだ。また評価にしても、けんか早いけれど正義感の強い子もいれば、円満な性格だが人助けに消極的な子もいる。優劣の評価をし難い場合も起こるだろう。

現在の小・中学校の多くでは、副読本やビデオを参考に、教師が人生体験に基づく講話をしたりして、生命を尊重し、思いやりの心を育てる授業が行なわれているようだ。

このほど中教審の教育課程部会(梶田叡一部会長)から明らかにされた、学習指導要領改定への中間報告「審議のまとめ」では、道徳教育の大切さは認めつつも、直ちに教科へ格上げすることは見送った。「先送り」の印象である。

しかし、一部報道によると、中間報告が道徳教育の課題として挙げているのは◇小学校では善悪の判断や集団の一員としての責任感を学ぶ◇中学校では法や決まり、社会とのかかわり、人生訓の学習◇高校ではインターネットでのいじめに対応して情報モラルの確立――などを求めている。インターネットの悪用は、今の社会ではゆるがせにできない問題だ。

中教審に比べると、教育再生会議の方は、道徳教育の教科化により積極的との印象を受ける。週一回の審議を重ねて、すでに二回の報告を出し、年明けには最終報告をまとめるという。教科名は「徳育」で検定教科書を使用、成績評価は数値でなく記述式とするとの方向だとか。

ただし、現在の福田康夫首相は、安倍前首相ほど教育問題に熱心でないともいわれ、最終報告がどんな扱いを受けるかは流動的との見方もある。

中教審も年度内には最終報告を出すというから、来春は教育をめぐって二つの意見がぶつかり合うことになる。道徳教育に関しては一方は慎重、一方は積極的である。現場の教師を当惑させることのないよう、配慮を望みたい。

千葉県在住の教育委員経験者A氏はこう言う。「米国をはじめ数ヵ国では、道徳教育を五歳から始める。四歳までは聞き分けができないが、五歳になると判断力がつくからだ。道徳はすべての教科の基本だから、日本もぜひ五歳児への道徳教育を考えてほしい。中学生や高校生になってから道徳を学ぶのは遅すぎる」。宗教界の人々はどう考えるのか。超宗派で政治家に、頂門の一針を……。