ニュース画像
「誠」の隊旗を掲げた五重塔院で営まれた法要
主な連載 過去の連載 エンディングへの備え
苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版

宗教的な価値への無知が軋轢を生む

2007年10月16日付 中外日報(社説)

「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」という少し変わったタイトルの和製西部劇映画のポスターと場面が最近問題となった。鳥居に人が首つりにされている場面があることに対し、神社本庁や神社関係者が抗議をした。

ポスターは村の入り口にある鳥居に、ギャングに捕らえられた村長が首をつられている場面だという。鳥居の部分はそれほど大きくないのだが、太陽を背景にしており、目立つといえば目立つ。ちょっとどきりとする人もいるかもしれない。

とくに神社関係者にとっては不快感をもよおす図柄であろう。製作委員会は抗議を受け入れる形で、ポスターや予告編を作り直したというが、映画自体は手を加えなかったようだ。

これで思い起こされるのは、今年六月に起こったソニーの「プレイステーション3」事件である。このゲームソフトの戦闘場面に、イギリスのマンチェスター大聖堂が無断で使用されていたので、英国国教会がソニーに抗議したという事件である。国教会は当初ソニーが謝罪やソフトの販売停止などに応じない場合、法的措置も辞さない構えだったが、ソニーが謝罪したことで一応収束の方向に向かった。

明らかなフィクションの映画やゲームであっても、その場面に特定の宗教施設や宗教的シンボルが使用されると、不快感を持つ人が出てくるのは避けられない。しかし表現の自由が大幅に認められている日本において、どのあたりが問題にすべきところかは、人によって大きく判断が異なりそうである。

いちいち目くじらを立てるようなことではないといった意見もあるようだが、こうしたことが異なった宗教や文化の間の緊張を高めるような結果にならないようには配慮すべきであろう。

昨年大ヒットした映画「ダ・ヴィンチ・コード」では、オプス・デイという実在の団体の修行僧が、異常な行動をする人物として描かれている。オプス・デイにとっては不快極まる描き方であったろう。映画そのものもイエスに子どもがいたという設定であるから、熱心なカトリック教徒にとっては許しがたいようなストーリーである。当然カトリック側からは抗議の声が上がった。しかし、日本ではキリスト教徒自体が一%程度と少数派であるためか、ストーリーがあまり問題とはされなかったようだ。

しかし、一昨年デンマークのユランズ・ポステン紙が、イスラームの預言者ムハンマドのターバンを時限爆弾に見立てた風刺画を掲載したいわゆるムハンマド風刺画事件となると、表現の自由の範囲が問われることになった。イスラーム圏に大きな反感をもたらしたからである。

それもあってか、日本の報道機関はその風刺画を直接紹介することを差し控えたようだ。なお、これに対しては翌二〇〇六年にイランの新聞が「ホロコースト風刺画」を掲載し、問題がエスカレートした感がある。

「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」の製作委員会が鳥居についてどのような認識を持っていたか分からない。しかし、聖なる領域への境界にある鳥居に死体がぶらさがるというのは、神社に親しみを持っている人には悪趣味に感じられよう。それを承知の上で、ある意図をもって作成したというのなら、それは表現の自由に守られることになろう。

しかし、そのような不快感を抱く人がいるとは予想しなかったということならば、逆にこれこそ問題にすべきかもしれない。つまり宗教問題に無頓着であるがゆえに、いらざるトラブルを招来するという一つの例になるからである。

国内問題にとどまるならまだしも、これが国際的な問題に発展するのは好ましくないのは明らかであるからだ。抗議する側も単に自分たちが不快になったというだけでなく、広い視点から見て、抗議するかしないかを判断するということも必要になろう。

▲ページトップに戻る